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  • Kentaro Osawa

『その男は天井から変な虫が落ちてくる空間に迷い込み、ややあって、将来的には囲碁や将棋を習得したいと考えた』掌編

更新日:6月15日


 その男は天井から変な虫が落ちてくる空間に迷い込み、ややあって、将来的には囲碁や将棋を習得したいと考えた。


 空間に迷い込んでから半時間ほどが過ぎていた。男は既に慣れていた。そして特に深刻にも考えもしなかった。遠くに光が見え、しばらく歩けば出られるだろうと。

 

 しかし虫は依然として落ちてくるため、歩くのが不快で、彼は同じ場所に留まり、映画のパンフレットを傘にして、しゃがんで地面に棒で絵を書いていた。


 そうしているうち、◯☓の陣地取りゲームを一人遊びするに至り、やがて(恐ろしいほどに勝ちが続くな...もしかすると囲碁や将棋の才能があるのかもしれない)と考え始めた。 


 今や彼は真剣に(ここを出たらさっそくAmazoで”囲碁 入門”などと検索し数冊を購入し、学び始めよう)と考えていたが、その矢先のことであった、

 彼の背後で鍋料理をしていた老婆が、吊るされた鍋を誤ってひっくり返した為に、男は煮えたぎったブイヨンやら丸鶏の崩れかけたものを頭からかぶることになった。


「うわ、あつ」


 これが彼の最期の言葉になった。老婆は「すみませんでした」と謝罪した。


 依然、天井からは変な虫が降り注ぎ続けていた。